アメリカ西海岸 フィンテック見聞記

サンフランシスコベイエリアのフィンテックで働きながら、見聞きしたことを書いています。

フィンテックはバブルなのか?インターネットバブルとの比較

一部ではフィンテックバブルと騒がれているアメリカのフィンテック業界ですが、実は私、2000年のインターネットバブルのときはインターネット業界におりました。

 

 

私は新卒時、サンフランシスコのインターネットコンテンツを提供する会社で働いておりました。まだ検索エンジンがグーグル独占ではなかった時代で、それこそ猫も杓子も検索エンジンビジネスに参入している時代でした。もちろん人工知能も今とは違って高かったので、私のいた会社は人海戦術で、若者がひたすらインターネット検索をして有料コンテンツを集めてページを作っていました。

 

ビジネスモデルとしては、コンテンツを集めて人を集めて広告費でもうける、という形だったと思われますが、どう見ても儲かっていないはずなのに、数ヶ月で社員数100人未満から600人になり、ささいなことですぐ業務を中断しシャンペンタワーが出てきて、かなり早い段階でIPOをしてバブっていた、バブルの見本市みたいな会社でした。

 

当時は投資家のお金が有り余っていたので、こんな会社でもインターネットというだけで、お金がどんどん集まってきてたんですね。社員も新卒の若い人が多かったので、通勤はスケボーや懐かしのローラーブレード、ペットを連れて来る人もいたし、すだれやラバランプを持ってきてヒッピーなデスク空間を作っていたり、とにかくふざけてました。

 

それから18年後の現在。当時のバブルと今のフィンテック業界の好況とは、確かに類似点がたくさんあります。

 

一番の類似点は、行き場のない投資家マネーがじゃんじゃん入ってくる事でしょうか。一体世の中どこをどうやったらそんなにお金があるのか、くらいの勢いで、リスクヘッジも含めてフィンテックに投資しようという投資家が世界中にいるので、評判のいい会社にはどんどんお金が集まってきます。

 

ちなみに私の勤務先も、創業一年目でものすごい額のお金が集まりまして、そんなにたくさんの初期投資はいらないと、断らなければいけなかったそうです。しかし断られた投資家のほうも、そこをなんとかとごり押ししてきたらしく、数ヶ月待ってから追加で10億円単位の投資を受け入れたそうです。

 

二番目の類似点は、人がどんどん集まってくる点。全米各地のいろんな業界からテックカンパニーやフィンテックで働くために人が集まってきます。そのためシリコンバレー、サンフランシスコエリアの物価が上昇し続け、それに耐えきれない人々がよそに出て行ってしまうという現象も起こっています。家の値段も、リーマンショック以前よりも高くなっています。まさにバブルの症状ですよね。

 

ただ以前と違う点も多々あって、ビジネスモデルと経営者の評判によって投資家の反応が変わってくるので、猫も杓子も参入して儲かっていたインターネットバブルとはかなり様子が違います。投資を受けた会社も、無計画に人を増やしたりとお金を湯水のように使うことなく、ビジネスとしてちゃんと成り立つよう考えています。ここは私の見た2000年当時のインターネット業界とはだいぶ異なるように思います。 

 

投資家も多様化していて、色々な形の投資でリスクヘッジをしているように見受けられます。投資を受ける側も、様々なニーズに応えるために投資のパッケージ方法などを考えています。多分、インターネットバブルのときは、テクノロジー主体でビジネスとしては未熟だったのですが、私がいるフィンテック業界は、サービスはテクノロジー主体でも、ファイナンス部門がしっかりしている所が多いと思われます。

 

さて、肝心のフィンテックがバブルなのか?という疑問なのですが、今のアメリカ経済は確かにバブルの様相を呈しています。その中で社会の根幹である金融をになうフィンテックですから、バブルがはじけたら必ず大打撃を受けるところが出てくるはずです。

 

特に自営業や一般の消費者向けのサービスを提供している会社は、厳しいでしょう。ただ、既存の銀行ではできなかった効率化やサービスを提供しているフィンテック業界自体がなくなることはないと思います。

 

もちろん金融業界全体を見ると、フィンテックのしめる割合はまだ小さいので、世間的に見たらたいしたことはないように見えると思います。つまりかつてのように、大企業がどんどん倒れて行って、社会不安を引き起こしたような状況にはならないでしょう。特に一般市民から預金をたくさん取っているフィンテックはまだないので、普通の人への影響は少ないと思われます。

 

 

 

 

フィンテックって何?

私は、アメリカ西海岸のフィンテックで働く会社員です。去年、40歳過ぎて育ち盛りの子供も養わなきゃならんのに、銀行という結構安定していた職場から転職した新米フィンテッカーです。

 

今までの職場とは違うカルチャーショックや、働きながら今までの考えが覆されることも多々あります。そんな話を面白く思ってくださる方もいるかも知れないと思い、ブログに記録することにしました。

 

フィンテックという言葉も既によく知られているのですが、これは英語のfintechのことで、金融(finance, financial)系テクノロジー(tech)会社の総称です。そして既に一つの業界としても定着しつつあります。

 

先駆けはなんといってもPayPalでしょうか。PayPalは創業時、パームパイロットなどのセキュリティーソフトを作ってました。それがテスラの創業者として有名なイーロン・マスク氏が作ったオンライン銀行と合併し、その後ebayのオンラインオークションの決済システムとして成功し、現在のような大きな会社になりました。ちなみにPayPal創業者はPayPalマフィアと呼ばれ、各界を牛耳ってでご活躍されております。

 

PayPalの他にも、Squareのような消費者向けの決済システムから始まって、現在のフィンテックは金融の様々な場面でしのぎを削っています。たとえば、消費者やビジネス向けローンビジネス(Lending Club、 Kabbageなど)サイトで複数の銀行や投資の口座を連動させて自動家計簿のように使えるサービス(LearnVest、Mintなど)、フィナンシャルリテラシーを高めるサービス(CreditKarma、NerdWalletなど)、マシーンラーニングで自分にあった投資ファンドを進めてくれる投資サービス(WealthFront、Sigfigなど)、自営業者向けのキャッシュマネージメントや請求業務の自動化(Zuora)など、多岐にわたっています。

 

上記の例以外にも、銀行やフィンテックのベンダー的な会社も含めたら、それこそ犬も歩けばフィンテックにあたるくらい、サンフランシスコ、シリコンバレー界隈には乱立しています。もちろんニューヨーク、ボストン含め全米各地にたくさんあります。一つ一つの会社の規模が小さいかわりに、かなりの数に上ると思われます。

 

もちろん、成功している会社の陰には、何百社もの屍がある訳ですが・・・。これについてはおいおい書いていきたいと思います。